「29歳・経営未経験の看護師」×「介護施設M&A」~事業承継の苦悩と成功~(後編)

今回は2020年6月に弊社の仲介で、介護施設を買収した三谷社長にインタビューしました。

三谷社長は経営未経験から、介護施設を買収して独立しました。

後編では、承継後の苦悩、新規事業の成功、そして今後の事業展開について伺いました。

前編はこちら:「29歳・経営未経験の看護師」×「介護施設M&A」~事業承継の苦悩と成功~(前編)

経営は「大変だけど、楽しい」と語る三谷社長(左)

承継後に感じた、経営者としての苦悩と新しい取り組み

-引き継いだ後に、社内的に苦労したことは何ですか?

三谷さん:人材管理ですかね。伝えたいことがうまく伝えられない、スタッフにうまく指示できないことに苦労しました。これはもう絶対的な経験値不足ですね。経営してるうちはずっと付きまとってくる問題だと思ってます。

-承継してから1年くらい経ちましたが、承継前に考えていたサービスは実現できていますか?成功したこと・失敗したこともあればお伺いしたいです。

三谷さん:失敗の方が多い気がしますが、実現できたこともありますね。訪問看護だったり、過疎化地域で介護と看護が包括的に受けられる施設の提供だったり。

「在宅で最期まで過ごしたい」という患者さんや利用者さんのニーズはどこにいっても高いです。過疎化地域かつ高齢者が多い地域で、そういった事業所が無いのは、やっぱり一種の社会問題でもあります。そこを早い段階で見極めて、人材を集めて、2021年5月に訪問看護を設立できたのは、すごくうまくいったかなと思います。

ただ、松前町のような地域は、大きい都市と比べて保守的な考えの方が多いんですよね。函館、札幌、東京、大阪、名古屋でやるようなマーケティングでは全然駄目なんだなっていうのは再認識しました。

「良いサービスを提供すれば、自然と使ってもらえるだろう」と思っていましたが、「みんなが使ってないから自分も使わない」「昔のやり方を変えたくない」という保守的な考えの方が多かったということです。

-そんな中でも、訪問看護は徐々に利用者さんも増えいると聞いています

三谷さん:そうですね。営業方法を変えてみたり、訪問看護の「健康寿命を延ばして、その人がその人らしく最期まで」という理念のもとサービスを提供しています。まだまだ実績は少ないですが、退院時は車いすだったのが訪問看護でリハビリを続けたところ、歩行器歩行までADLを上げる事ができました。また、日々の健康管理で些細な症状に気づき病気が悪化するのを事前に防ぎ、連携病院へすぐに状態報告することができたりと、些細な事ですが小さな実績を残すとやっぱり反応も違ってきますね。ただ、浸透スピードはすごく遅いです。

2021年5月にハイム介護計画株式会社で開設した「訪問看護ステーション はぁと」のロゴ

今後の事業展開、展望

-承継して1年たった今、心境の変化はありますか?

三谷さん:承継前は承継前でやることがたくさんありました。今までこんなに勉強したの初めてだなっていうくらい勉強したんですけど、今になってまだまだやることがたくさんあるなという感じです。

-今後の事業目標や計画を教えてください。

三谷さん:承継から1年が経って、ハイム介護計画株式会社(以下:ハイム社)の中のことはある程度落ち着いてきて、訪問看護の立ち上げも一段落しました。いまは営業活動範囲が北斗市と函館なので、それをまず道内で広げる。訪問看護が広まっていないところへ、広げていきたいですね。

ハイム社として目指してるのは、「安心安全の一歩先」と「健康寿命を延ばす」ことなので、能動的な健康作りの仕掛けを開発しながら、介護や他の事業を展開していきたいなと思っています。

-いずれ医療との連携も強化していくお考えですか?

三谷さん:やっぱり介護だけとなると対応できない部分が多いので、病院やクリニックとの連携は課題ですね。病院があって老健があってデイサービスがあって、あとは有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅、と地域包括ケアシステムの中で存在感を出していけるといいですね。

病院だけだと、その後の受け皿がない。介護だけだったら、医療的処置が必要な方を受け入れられないから、ただ介護だけになってしまう。規模を大きくして売上を伸ばしていくとしたら、介護分野に加えて、医療分野にも積極的に進出していくことが必要になってくると改めて実感しましたね。

これから個人でM&Aを考えている方へのアドバイス

-M&Aがはじめての方に、これだけはやっておいたほうがいいとお伝えしたいことはありますか?

三谷さん:初めてのM&Aでは、何を勉強しても足りないですよ。強いて言えば、決算書が読めるようになることと、自分が経営していきたい職種の動向や、マーケティングをやっておいたが方がいいですね。M&Aは「買ってゴール」ではなく、「買って初めてスタートライン」に立ちます。買っちゃったらもう後戻りできません。

「今、これをやりたいから、そのために頑張るんだ」って考えて、でもやったらやったで全然うまくいかなくなって倒産や自己破産の可能性もあります。自分が関わる職種に関しては、しっかり下調べしておいたほうがいいです。僕は看護師で、ある程度は医療福祉について分かっていたので知識が入ってきやすかったですけど、これがもし飲食店等の全く違う分野だったら、ひどいことになってたと思います。

-最後に、個人でM&A考えている方へのメッセージをお願いします。

三谷さん:自分が成功するビジョンを描くのであれば、ある程度は苦労しなきゃいけないですね。承継前の苦労なんて、経営し始めたら大した苦労じゃなかったなと感じると思います。なので、最初は寝る間も惜しんでいろいろ調べる。あと分からないところは素直に認める。変に知ったかぶりしても全然いいことないので、そこはしっかり分からないと言えることですね。

-本日は貴重なお話をありがとうございました。

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writer: やまちの (https://note.com/yamachino)

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